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ノベツマクナシ

低所得者層にいます

一回目 午後の最後の芝生

村上春樹
余所で公開してた文章を少しいじって再放出す。手抜きじゃない。
読書感想文的なものを書いてみようと思って書き始めたけど、着地がうまくいかなかった。
 
「午後の最後の芝生」について
午後の最後の芝生が収録された本は「中国行きのスロウ・ボート」という短篇集になっている。が、私が買ったのは象の消滅・短篇選集という本。小口も表紙も全てが黄色なのでまあ~目を引く。表紙には金属で作られたゾウの骨組みが描かれている。
午後の最後の芝生は村上春樹が手がけた短篇小説の中でも(僕の中で)評価が高い一遍。
 
あらすじ
「僕」はその夏、手紙の上で彼女に振られ、バイトの芝刈りでお金を稼ぐことに意味も見いだせなくなり辞めることを上司に告げるが、一週間だけ延長してくれと頼まれる。そして最後の一軒へ向かい、芝生を刈る仕事を全うする。
 
主人公は「僕」で誰も彼の名前を呼ばない。他にも登場人物は居るが、誰も名前を名乗らないし、呼ばれもしない。登場人物もバイト先の上司、元カノ、最後の仕事先にいる女主人とさっぱりしている。元カノに至っては手紙の中の言葉でしか登場しないため、実際に喋ってもいない。
冒頭で「僕」はふとした時に15年前のことを思い返し、読者に語りかけるところから始まる。ひと通り紹介するまではしゃらくささがプンプン漂っている。わざわざ言い直してみたり、ポーズと取ってみたりと面倒くさい。この作品を読み終えてからもう一度この部分を読み返すと少し面白い。
それでも過去を語り始めた途端、あっさりとその鬱陶しさが鳴りを潜めていく。ポンポンと話を繋げていくし、長すぎもしないし短すぎもしない。短篇なだけあって無駄がない。
 
最後の仕事をしているパートはひたすら暑そうな描写が続く。三回も剥けた背中や、服を絞ると出てくる汗など色々な方法でその仕事や夏のキツさが文字になっている。そろそろかな?と思ったタイミングで次の話題へ行くのが本当に気持ちがいい。風がさっと熱気を払う感覚に似ている。女主人は「僕」の仕事ぶりを見ていくうちに「僕」に亡くなった外国人の亭主や娘を見出し、サンドイッチや酒・娘の部屋を通し少しずつ「僕」にそのことを伝えていく。
 
小説などの創作物は共通して言葉にしてはいけないモノや領域がある。ソレが何かは作品によっては違うが、ソレは常に登場人物にとって紛れもない真実であり、感情の動きだったり、明かされない過去だったりする。こういった言葉にしてはいけないモノは文字になった瞬間陳腐なニセモノになる。小説だって全部ウソの創作だとわかっているのに、単なるまがい物として目に映るようになる。語り手と読み手の距離は離れてしまう。この作品は最後までソレを言葉にしないまま、だがそれとなく「僕」に気付かせるところがとても良かった。女主人は「僕」と同じくとり残された人であり、色々なものにしがみつこうとしなかった結果、酒瓶と芝生だけが残った人でした。
 
感想
暑そうだなぁとか、サンドイッチ美味しそうだなぁとか、きっと空も綺麗に晴れてるだろうなど、とにかく読者に想像させるのが上手い。キャラクターに説明させるにしろ「暑い」や「ウマイ」を言わせず読者に感じさせるのが小説なんですよねえ~。それにしても「僕」は結婚するにしろ付き合うにしろ面倒くさい人です。孤独癖がある人と付き合うのはラクじゃない。
他人に対して何も求めない代わりに頑固。優しいけど人間味がない。19の女の子にはそりゃ面倒になりますわな!