ノベツマクナシ

低所得者層にいます

日記98 ホセ・ドノソの別荘を読んだ

ホセ・ドノソの別荘という作品を読んだ。

 鉱山から発掘される金を加工し、独占し世界に流すことで繁栄してきた一族(総勢33人の子供と16人の大人)の話。全編を通して筆者が語り部として登場、前後関係や隠されていた事実、過去をタイミングよく明かしていき、また自身をキャラクターとして登場させることで「物語におけるリアリティ」に対する考えを実際に文章で読ませるだけでなくストーリーに組み込んでいて、もう唸るしかない。この部分は読めばわかる。ウソをもってして真実を語るを完全に再現しています。これは文章だからこそ出来る領域。映像じゃ無理。

特に権力者である大人にとって不都合な真実から目をそらせる為に、一族総出で仕立てあげた完璧な世界が彼らの現実として扱われている様子の狂いっぷりが美しくて残酷。限りなく広がる領地に何百もある部屋にバルコニー、領地を囲う鋼鉄で出来た槍、衣装や家具への描写が丁寧で脳にやさしい。

終盤へと向かうに連れ何が現実で何がごっこ遊びなのかが分からなくなり、最終的には誰も彼も時間の感覚を奪われていくのは鳥肌が立った。単なるどんでん返しの繰り返しではなくどちらかと言うと神話を思わせる話で、決められた役にそって人物が決められた動きをするような、人間としての深みや自由が無い(これは設定でカバーしていた)のも寓話的。個人的にはキャラクターとしての自由(心理描写や劇中に起こる気持ちの変化)が殆ど無いからこそ、動物としての人間がどういうものかを浮き彫りにしていて、それこそリアリティを感じてとても新鮮。

著者自身も作中この作品を物語と表記しながらも小説に訂正するシーンがあるので、意図してやってるはず。

まとめ

私の性的指向にも関係があるんですが、男の描写が良かった。セクシー。