読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ノベツマクナシ

低所得者層にいます

今更Spending All my TimeのPVについて

Spending All my TimeのPVは謎めいているようで、ストーリー自体はシンプルである。エスパー養成所で監禁された三人の少女が、繰り返し自分の力に向き合いパワーアップすることで協力するも、結局は同じループをたどるというもの。

しかしこのPVが凄いのは、そのストーリーの見せ方と音楽ひいては歌詞を映像とし見せる手法が研ぎ澄まされているところ。

歌詞の基本フレーズはSpending All my TimeとLoving you Foreverのみ。これがひたすら繰り返され、また映像も同じ構図の映像を複数用意し反芻させている。それぞれに少しずつの違いや角度を付け、いわゆるループものらしさを際立たせつつモチーフからも世界観と歌詞をリンクさせることが出来るようになっているのだ。

冒頭、ドアの前で佇む三人。ノックをしてノブを回すも反対側からのドアはノブ・鍵穴すらなく、しかも南京錠が掛かっている。出られないよう軟禁された状態に対し、外側からもアプローチが出来ないようにカギをかけるあたりに一切のコミュニケーションの拒否を読み取れる。

軟禁するにしてもあ~ちゃんがいる側のドアにノブや鍵穴を付け、外に出られるかもしれないと希望を抱かせているあたりがめちゃくちゃ残酷。一番パート最後であ~ちゃん達がノックをしていた場所は、ドアのそばにかけられた青のカーテンから想像するに、緑のカーペットが敷かれた部屋、つまり三人それぞれが能力を鍛えている部屋だということがわかる。

三人が横並びにイスに腰掛け、または立ちながら踊る部屋はオレンジ色のカーペットが敷かれている。設置されたハメ殺しの窓は塗りつぶされていて。窓を開けることも出来ず、しかも外が見えないようにされ、外に通じる概念を残しつつもそれらが無効化されていることを視覚的にわかりやすく伝えている。

廊下(?)を歩く一人、外側で出会う二人。しかし三人が部屋の外で集まることはない。袖をまくり見せてくるナンバリングされた腕からは彼女達が管理されている立場である印象を与えてくる。

机の上で手遊びをするかしゆかは、それをするごとにのっちを見上げるが、のっちからの反応はなし。のっちはあ~ちゃん・かしゆか双方に外側で出会っている唯一のメンバー。ということは一人で歩いているのはのっちだろうか?

かしゆかとのっちがあ~ちゃんに対し見ざる・聞かざる・言わざるの動作を施して一周目が終わる。

二周目が始まる。最初に映るりんごでいきなり超能力が使えることがわかる。それぞれのメンバーは二回ずつ違う能力を使うシーンがあるが、あ~ちゃんだけはりんごが最初から浮いていて、あ~ちゃんがそれに気付く形で表現されている。そして二回とも違う方向を見ている。つまり部屋の中にいる他者の存在を認識している。

しかしのっち・かしゆかの視点は一定で常に前を向いている。
のっちかしゆかの能力は共通している。モノを透視する能力と粉砕し捻じ曲げる力。
特にかしゆかへの描写が多く、一周目で見せたのっちとかしゆかが対面して見せたあの動作でもって花瓶やつみ木の城を粉砕したり(!)、鏡越しにコチラがわ(カメラ)を覗きこんだりしている。

オチサビ直前にあ~ちゃんがソロシーンで見ている相手は手をつなぐ際ののっちだということがわかる。冒頭で手を重ね合わせたりと、のっちあ~ちゃんは繋がり合う描写があるのに、かしゆかだけが一人で、しかものっちに対し能力を使うフリ付けがある。それに対しのっちはカギを掛けるパントマイムで拒否を表現。興味深い!

床に座りあ~ちゃんが居た空間を見つめるシーンと、椅子に座りのっちを見上げるかしゆかから、三人全員が誰かを見ているが、視線が交差することはないことがわかる。

このPVで何度も表現されているのが、コミュニケーションが取れない閉鎖された空間と状況だ。外が見えないよう塗りつぶされ、ハメゴロしになった窓や内側から鍵がかかった部屋。金庫や鏡。

同じ動きと映像の繰り返し&交差することのない目線、ひとりよがりで繰り返される執念のような歌詞と世界を見事に表現仕切っている。しかも映るキャラクターや設定とはあずかり知らないところでだ。凄い。