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ノベツマクナシ

低所得者層にいます

モーニング娘。「彼と一緒にお店がしたい!」に隠された壮大な伏線

大掛かりなセットを組むこと無く、最新テクノロジーを使うわけでもなく、パフォーマンスショットを見せるわけでもない。アイドルにとって、いや全てのミュージシャンにとってもこの3つを抜きにPVを作るというのはとてもハードルが高いのですが、この「彼と一緒にお店がしたい!」アイディアだけでこれら3つのハードルを超えています。

発売時期は2011年9月、ちょうどKAWAIIで革命を起こしたきゃりーぱみゅぱみゅ「PONPONPON」の発売二ヶ月後、ほぼ同時期にここまで濃度の濃いカワイイ路線が2つも世に放たれていたことを私は知らないままいました。そしてこの「彼と一緒にお店がしたい!」を見ているうちに、どんどんと違った意味合いが生まれてきてしまいました。ともかく、このPVの衣装と構成の素晴らしさについて書こうと思います。

①衣装が凄い!

高橋愛卒業シングルということもあり、彼女のイメージカラーの黄色が全員に使われ、それに加えてオレンジ・赤・ピンク・水色を基調に衣装が作られているのですが、ここまでリアルクローズを元に、なおかつ曲中の世界観を表現できるのかと愕然としました。年長組はキャリアウーマン、軍人、ファーストフードの店員で年少組は学生服をモチーフにしています。「働いてお金を稼ぐ大人」「子供の本業は学ぶこと」という文字にすると真剣味が出てしまう世界をここまで楽しく派手にしてしまうスタイリスト・衣装スタッフは素晴らしいですね。よく見るとジャケットやブラウスなど制作上パターンが重なるであろう共通項はあり「人材とお金を使いました」という感じがしないのがまた違った種類の豊かさを感じます。完全に目にうるさいと言えるまでの配色・モチーフの重ねづけもなぜか「こういう世界観だから」でカワイイものとして見られる。お手上げです。何も文句を付けられない。

②PVの構成が凄い!

このPVは一時期斬新な発想で世界中を駆け抜けたドイツ映画「ラン・ローラ・ラン」の構成をうまく踏襲していて、なおかつ完全にオリジナル作品として昇華しています。「ラン・ローラ・ラン」はローラが劇中合計三回人生を歩みなおし、それぞれのパートで彼のために走りまくるという映画で、分かれているパートを絶妙な演出でつなげているのですが「彼と一緒にお店がしたい!」でもそれを再現している上、A面「この地球の平和を本気で願ってるんだよ!」とのPVにも繋がりを持たせています。


モーニング娘。 『この地球の平和を本気で願ってるんだよ!』 (MVLong) - YouTube

A面「この地球の平和を本気で願ってるんだよ!」は当時のリーダー・高橋愛が、「彼と一緒にお店がしたい!」は道重さゆみがそれぞれのPVにて冒頭と末尾をソロで飾っているのですが、高橋愛は末尾にて光り輝く銀河の中、踊りまくる夢の世界から道重さゆみの世界を覗き込み、道重さゆみは冒頭にて現実世界のベッドで夢を見ながら、高橋愛含む仲間と共にそれぞれあったかもしれない姿を繰り返し夢見るという、いわゆるプラチナ期の象徴である旧リーダー高橋愛の時代から、新しいモーニング娘。への移行を端的に表現した仕掛けがほどこされています。新旧のリーダーが、片方は夢の世界から、片方は現実の世界からお互いを想い合う_素晴らしいの一言です。こんなにもスムーズに世代交代するアイドルを見せることができるだなんて。

更に深くつっこむと、「彼と一緒にお店がしたい!」では道重さゆみが眠り夢を見ているという世界を利用し、3回同じシーンの中にそれぞれ細かい違いを出しながら再現するという、まさにラン・ローラ・ランの究極オマージュが。複数回撮影されるであろうリップシーンをムダにしないスマートさもうかがえます。

そして目覚まし時計のアラーム音から始まる冒頭(ここでもう夢の世界の存在を匂わせる導入を済ませているんですから相当スマート)で道重さゆみは仲間がそれぞれが人生を謳歌する姿を何度も夢に見て、最後に「この地球の平和を本気で願ってるんだよ!」の衣装を着た道重さゆみが夢に現れ「ダメ!」と言って終わる。この「ダメ!」の意味がより大きく、そして重くなると、当時誰が想像出来たでしょうか。

夢ばかり見てちゃダメだと(とってもかわいく)叱咤する自分に負けず、道重さゆみは卒業を発表した現時点での最新シングル「時空を超え 宇宙を超え」で、かつての高橋愛と同じように仲間たちと銀河で踊るのです。

「私はまだね未完成 遠い過去から君を待つ この世で出会えると信じ 君を待つ」

ちゃゆ、やっと出会えたね。夢見ていた自分に、しかもこの世で出会えたね。こんなに嬉しいことはないね。

卒業するまであと少しだけど、おめでとう。あなたは最高のアイドルです。

 

まとめ・彼と一緒にお店がしたい!はよく出来たPVだなぁー、もっとみんなに見て欲しいなぁとぼんやり見なおしていた所、私の中でとんでもなく大掛かりな作品になっていきました。全ては私のこじつけであり、意図したものかどうかはわかりません。それでも、道重さゆみがこういった推測を私の中で成立させるだけの行動を起こし、納得させたのもまた事実です。その推測が間違っていないと思わせるに足るだけのアイドルであったということなのです。