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ノベツマクナシ

低所得者層にいます

日記54 ひとつの時代の終わり

先に現実に根を下ろしたのはAだった。

私は彼より先に現実世界でアルバイトをしてお金を稼いでいたが、それは結局ネットにAがいるという安心感の上だったのだ。

彼はサッと自分の居場所を消してしまった。もう十分なのだろう。現実問題としてUstで放送する為に必要なあらゆるPCパーツが壊れ始め、ソレが作る私たちの場所を維持するためにお金をかけていられないのもあるはずだ。次は何をする、放送のために好きなアイドルがでる番組を録画する、そんな風に段々と放送は彼にとって負担となってしまったのだろう。

お互いを肯定しあう狭い世界を守るために、私はついに最後まで彼にこれからどうするのかということを話し合えなかった。勿論彼なりに動いているのを知っていたからこそ尊重していたのもある。それ以上にここまで自分を甘やかしてくれた彼を手放すのが怖かった。

私にとってまだ数年も、彼にとってはもう数年だったのか。何にせよ自分を肯定してくれる場所を自分から離れるなんて私にはできない。少なくとも今はできない。

一方で彼が居なくなったからこそ、私は生きていくために必要な技術や資格を身につける方法を具体的に考え始めたのだ。全てが悪くなったわけではない。週末は髪を切って面接に行く。短期アルバイトでまた軍資金をかせぐのだ。今度はネットの世界で生き延びるためではなく、自分の足が届く範囲を広げるために稼ごう。

彼が動いているのに、私だけが留まるのはなんだか悔しい(私がアルバイトをしている時、彼もそう思ってくれただろうか)

長期に渡る付き合いもこうやってあっさり形を変えてしまう。これも私にとってはひとつの時代のようなものだった。